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不育症とは

妊娠するものの2回以上の流産、死産を繰り返し、結果的に子供を持てない場合を、『不育症』と定義されています。(厚生労働省不育症研究班より)

ただし、流産の原因は赤ちゃん(主には特発性に起こる染色体異常)である場合も多いことが色々な検査(着床前診断、流産絨毛検査、出生前検査など)でわかっており、女性の年齢が上がるほどその可能性は高くなります。

『不育症検査』とは、偶然に起こる赤ちゃんの染色体異常による流産とは別に、『お母さんやお父さんになる方に流産しやすい体質がないかを調べる検査』です。

 

不育症の検査と治療について

以下のグラフは厚生労働省不育症研究班が集計したデータです。

不育症の原因になっていると考えられる項目(リスク因子)について検査を行います。

 

① 子宮形態異常

生まれつき子宮の赤ちゃんを育てるお部屋が小さい方がおられ、流産しやすい原因となることもあります。

治す方法は手術しかありませんが、手術することにより子宮の中が癒着し妊娠しにくくなる可能性も考えなければなりません。

子宮形態異常は子供に遺伝する事はなく、エコー検査、子宮卵管造影検査、子宮鏡検査にて調べられます。

 
② 甲状腺機能異常

甲状腺とは喉の辺りにある約4㎝の蝶のような形をした臓器です。

甲状腺からつくられるホルモンは新陳代謝の調節などに重要な働きをしており、異常があると流産をしやすくなることがわかっています。

当院では甲状腺ホルモンを血液検査にて測定し、異常が認められた方には専門施設をご紹介し、甲状腺ホルモンを正常化しながら次の妊娠へチャレンジできるよう準備を整えます。

 

③ 夫婦染色体異常

カップルのどちらかに生まれつき染色体異常があると、流産しやすい原因となることがあります。ご夫婦染色体検査については、流産の原因や流産しやすいかどうかがわかるというメリットがある一方で、治すことができない、もし異常がわかった場合には相手や自分を責めたりしてしまうという精神的苦痛が起こる可能性があります。検査をご希望の際には、慎重にご説明し、結果により専門施設へご紹介します。

 

④ 抗リン脂質抗体、第XII因子、プロテインS、プロテインC

リン脂質とは、細胞を構成する成分であり、抗リン脂質抗体とは「リン脂質またはリン脂質とタンパクの複合体に対する自己抗体(※1)」の総称です。この抗体があると血管内に血の固まり(血栓)ができやすくなります。妊娠してから胎盤を作る血管に血栓ができると血流が悪くなり、流産の原因となります。リン脂質やそれにくっついて反応するタンパクは実にたくさんあり、その中でも流産に関係する項目を血液検査で調べます。また、血液が固まるには様々な物質が絶妙なバランスで働いていますが、中でも第XII因子、プロテインS、プロテインCは血液を固めないために働く物質です。これらに対する自己抗体があると血栓ができやすくなり、結果として流産の原因となります。血液検査にて異常(低下)がないか測定します。

異常が認められた場合には、血液が固まりにくくなる低用量アスピリンという内服薬やヘパリンという注射を妊娠前または妊娠後から投与する治療を行うことで流産を防げる可能性が高くなるといわれています。アスピリンやヘパリンは流産の可能性を低くする一方で、出血が起こりやすい、止まりにくいというリスクもあります。治療についてはこれらのメリットやリスクも踏まえ、相談しながら治療を決めてまいります。

※1自己抗体について

私たちのからだには、細菌やウィルスなどの微生物や異物が体の中に侵入してくると、これらに抵抗する物質(抗体)を作って排除し、体を一定の状態に保つ働きがあります。これを免疫といい、この抗体は普通なら自分の体を攻撃することはありません。しかし、何らかの原因で自分の細胞成分に対して抗体を作ってしまい、自分の体を攻撃してしまうことがあります。この抗体を『自己抗体』といいます。流産に関連する自己抗体がないか不育症検査で測定できます。

 

⑤β2GPIネオセルフ抗体

流産を引き起こす可能性がある抗リン脂質抗体症候群の原因となる自己抗体です。近年新たに発見された抗体で、不妊症、不育症の原因となりうると考えられています。当院でも検査可能です。上記の検査を受けても原因が特定できず、リスク因子不明の方の約20%の方が検査陽性になるといわれています。血液検査により測定可能です。陽性となった場合には、血液が固まりにくくなるアスピリン療法やヘパリン療法をお勧めすることがあります。ご希望の方は医師にご相談ください。

 

 

Tender Loving Care

不育症治療のひとつに『テンダー・ラビング・ケア(Tender Loving Care):流死産の不安やストレスを軽減するために行われる心理的サポート』があります。

流産や死産は経験された方にとっては人生の中でも重大な出来事であり、次回妊娠への不安は検査や一般的な説明だけで軽減できるものばかりではありません。

回数やご年齢にかかわらず、不育症を心配される方は、お気軽にご相談ください。

 

院長:松本由紀子(日本産科婦人科学会認定 産婦人科専門医・日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医・日本生殖医学会認定 生殖医療専門医)

 

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